飲料・ヘルスサイエンス大手のキリンホールディングス(キリンHD)が、自社のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)ファンドを通じてVTuber事業を展開する株式会社Brave groupへ出資した。ぶいすぽっ!や韓国最大級のVTuberプロダクション「StelLive(ステライブ)」を擁するBrave groupに対し、ヘルスサイエンス領域の資金が投じられたことで、エンターテインメントと健康事業の新たな接点が形づくられる構図となっている。
キリンHD(社長COO・南方健志)は2026年4月22日、独立系ベンチャーキャピタル大手のグローバル・ブレイン株式会社(社長・百合本安彦)と共同で運営するCVCファンド「KIRIN HEALTH INNOVATION FUND」を通じて、株式会社Brave group(代表取締役社長・野口圭登)へ出資したと発表した。実際の出資実行は2025年7月31日に行われている。
同ファンドは2020年3月に組成された運用総額50億円のヘルスサイエンス領域特化型CVCで、運用期間は10年。グローバル・ブレインが無限責任組合員、キリンHDが有限責任組合員として参画している。これまでにPOCT検査デバイスを手がけるイムノセンスや、個人クリエイター向け支援サービス「MOSH」などへ出資してきた経緯があり、VTuber IP企業への出資は同ファンドにとって異色の領域拡張となる。
キリンHDが今回の出資理由として掲げたのは、Z世代・α世代のデジタルネイティブ層が抱える潜在的な健康課題である。同社はメンタル、睡眠、生活習慣の領域で若年層が抱える課題に向き合うには、単なる情報提供にとどまらず双方向的なコミュニケーションが不可欠だとの認識を示した。テレビCMなどのマス型メディアによる情報接触に加え、インフルエンサーや「推し」との双方向的なコミュニケーションを通じて情報を受け取るスタイルが若年層に広がっていることを背景に、eSportsや音楽など若年層との親和性が高いコンテンツを強みとするBrave groupの基盤を、ヘルスサイエンス領域における新規事業創出に活用する狙いだ。
Brave groupは2017年10月に東京都港区で設立されたIP企業で、「世界に、日本の冒険心を」というパーパスのもと多角的な事業を展開してきた。次世代Virtual esports Projectぶいすぽっ!、バーチャルミュージックレーベルRIOT MUSICなどのIPプロダクション事業に加え、アニメ・マンガの公式グッズ・公式ライセンス商品ECサイトcolleize、トレーディングカードゲームXross Starsを運営するプラットフォーム事業も保有する。米国・英国・タイ・中国に現地法人を構え、2025年7月には韓国最大級のVTuberプロダクションStelLiveとの経営統合を発表し、韓国法人Brave group Koreaを立ち上げた。今回の出資は、グローバル・ブレインがBrave groupへ資金を投じる2回目のケースに当たる。同社は2024年4月に「31VENTURES Global Innovation Fund 2号」を通じた出資を発表しており、KIRIN HEALTH INNOVATION FUNDによる追加出資で両社の資本関係はさらに深まる形となった。なお、Brave groupは2024年9月期決算で純損失21億5645万円を計上し、前期比約2.4倍の赤字となっている。海外拠点の設立やM&Aに伴う先行投資が業績に反映された結果と分析される。
ヘルスサイエンス領域の資金がVTuber IP企業に投じられる動きは、業界横断的な融合の新たな兆しと位置付けられる。韓国市場でも2024年12月にIT大手カカオ(Kakao)がBrave groupと資本業務提携を結んだ事例があり、グローバル大手によるVTuber IP企業への資本参画は徐々に広がりを見せている。キリンHD側は今回の出資について短期的なシナジー創出にこだわらず、中長期的な視点での価値創出を重視する方針を示している。ヘルスサイエンスとVTuberエンターテインメント領域がどのように具体的な事業として結実していくかが、今後の注目点となる。

