ホーム産業メタ、8000人削減・6000人採用中止へ メタバースからAIへ全面シフト

メタ、8000人削減・6000人採用中止へ メタバースからAIへ全面シフト

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巨大IT企業のAI投資競争が、企業の人員構成そのものを塗り替えている。米メタ(Meta)が、かつて社名を変えてまで掲げた「メタバース優先」戦略を事実上撤回し、経営資源を生成AIへと全面的に振り向ける決断を下した。業績不振ではなく、戦略転換から生じた人員削減である点に、業界の注目が集まっている。

メタは5月20日(現地時間)、全従業員の約10%にあたる約8000人の整理解雇に着手した。同時に、採用を予定していた約6000人分の空きポジションも撤回し、実質的な人員削減規模は1万4000人規模に達する。今回の削減は、VR部門のリアリティ・ラボ(Reality Labs)をはじめ、フェイスブック事業部、採用、営業、グローバル運営など全社にわたる。人員を減らす一方で、約7000人を応用AIエンジニアリングなどのAI中心組織へ再配置し、組織を小規模な単位に再編する構造改革も並行して進めている。

削減の背景には、巨額のAIインフラ投資がある。メタは第1四半期決算で、今年の設備投資見通しを従来の1150億〜1350億ドルから1250億〜1450億ドル(約19兆6000億〜22兆7000億円)へと引き上げた。データセンター建設やAIサーバー、GPU確保などに充てる費用で、部品価格の上昇と今後のデータセンター需要への対応が引き上げの理由として示された。同社は従業員に対し、これを「会社をより効率的に運営し、進行中の他の投資を相殺するための取り組みの一環」と説明している。

注目すべきは、今回の決断が不振な業績から出たものではないという点だ。メタの第1四半期(1〜3月)売上高は563億1000万ドル(約8兆8000億円)で前年同期比33%増、純利益は268億ドル(約4兆2000億円)で同61%増を記録した。会社が苦境にあるからではなく、人的労働よりAIインフラの収益性が高いと判断して資源を移す選択だ、との分析が出る理由である。マーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)最高経営責任者(CEO)は、広告レコメンドシステムの自動化、AIアシスタント、次世代コンテンツ生成技術を同社の将来事業として掲げ、フェイスブック・インスタグラム・ワッツアップ全般に生成AI機能を急速に拡大している。

今回の削減は単発ではない。メタは今年1月にリアリティ・ラボで約1000人を削減しVRゲームスタジオ数社を閉鎖、3月にも少なくとも5部門で約700人を追加削減した。コンテンツ審査業務を外部委託業者から自社AIシステムへ移す作業も並行している。ザッカーバーグ氏が2022年以降に削減した人員は累計3万人を超える。なお解雇の過程では、米メディア「モア・パーフェクト・ユニオン」(More Perfect Union)が公開した全社会議の録音で、同氏が従業員の作業データを収集して自社AIモデルを学習させていると言及し、解雇を控えた従業員を刺激するような発言をしたと報じられ、社内の反発を招いている。社名をメタバースから取ったほど仮想世界の未来を強調した企業が優先順位をAIへ移したことで、かつて次世代インターネットと呼ばれたメタバースの構想は勢いを失いつつある。

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