ホーム産業ANYCOLOR、営業利益予想の下方修正で株価16%急落…在庫処分費用が重荷に

ANYCOLOR、営業利益予想の下方修正で株価16%急落…在庫処分費用が重荷に

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国内VTuber業界を代表する上場企業ANYCOLORが、2022年6月の東証上場以来初めて業績予想の下方修正に踏み切った。今期だけで2度の上方修正を行った直後の下方修正となり、市場ではネガティブサプライズとして受け止められている。

ANYCOLOR(東証プライム:5032)は3月11日の大引け後、2026年4月期(2025年5月〜2026年4月)通期業績予想の修正を開示した。売上高は従来予想の520億〜540億円から547億3000万〜556億3000万円へ引き上げた一方、営業利益は210億〜220億円から198億2400万〜203億5900万円へ、純利益は145億7000万〜152億6000万円から140億1500万〜143億8700万円へそれぞれ下方修正した。経常利益も210億〜220億円から198億4000万〜203億7500万円へ引き下げている。

利益下振れの直接的な要因は在庫関連費用である。ANYCOLORは第3四半期(2025年11月〜2026年1月)に、数年前に開催したイベントに関連するグッズの処分を実施し、9億7000万円の費用を計上した。さらに第4四半期には棚卸資産の評価基準を見直し、初期段階で約15億円の評価損が発生する見込みだと説明している。第3四半期の処分費用と第4四半期の評価損を合わせると約25億円規模の一時的な費用負担が利益を押し下げた格好だ。

一方、本業の成長基調は堅調さを維持している。第3四半期累計(2025年5月〜2026年1月)の売上高は420億2000万円で前年同期比45.4%増、営業利益は169億900万円で同54.2%増、純利益は117億9300万円で同55.5%増と大幅な増収増益を確保した。第3四半期単独(2025年11月〜2026年1月)でも経常利益は58億4000万円と前年同期比39.8%増を記録し、売上営業利益率は36.4%から37.2%へ改善した。コマース領域の持続的な拡大に加え、年末年始のカウントダウンライブをはじめとするイベント売上が想定を上回ったことが業績を牽引した。

にじさんじおよびNIJISANJI EN所属のVTuber数は172名で前年同期から7名増加した。公式ストアやファンクラブの利用に必要なANYCOLOR IDは194万4000件に達し、前年同期比25.5%の伸びを示した。法人スポンサーシップ、配信視聴数、グッズ販売といった主要収益源への需要も引き続き底堅く推移している。

翌12日の東証市場でANYCOLOR株は前日比16%安の3,415円まで売り込まれ、約2%下落したTOPIX構成銘柄の中で2番目に大きな下落率を記録した。競合のカバー(東証グロース:5253)もホロライブプロダクション運営元として連想売りが波及し、3.7%安で取引を終えた。

市場が強く反応した背景には、下方修正幅そのものよりもシグナルとしての意味合いがある。ANYCOLORは上場以来一度も業績予想を引き下げたことがなく、今期も第1四半期・第2四半期と連続で上方修正を実施していた。売上成長が利益拡大に直結する構図を投資家は織り込んできたが、数年にわたり蓄積したイベントグッズの在庫が一括で費用化されたことでその前提が揺らいだ形だ。国内VTuber市場の二大上場企業が同時に株価下落に見舞われたことは、セクター全体のバリュエーション見直しの動きとも読み取れる。

ANYCOLORは中期経営目標として2027年4月期に売上高600億円、営業利益240億円の達成を掲げている。今回の在庫整理が一過性の対応にとどまれば本業の成長軌道への影響は限定的とみられるが、VTuber事業特有のグッズ・イベント中心の収益構造において在庫管理が収益性を左右する重要な変数として浮き彫りになった事例といえる。

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