ホーム産業Meta、Horizon WorldsのVR終了方針を発表翌日に撤回――モバイル集中路線は維持

Meta、Horizon WorldsのVR終了方針を発表翌日に撤回――モバイル集中路線は維持

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Metaが自社メタバースサービス「Horizon Worlds」のVRサポート終了方針を、発表からわずか1日で撤回した。XR市場全体が縮小傾向にあるなか、VRソーシャルプラットフォームの事業的限界を改めて浮き彫りにする一幕となった。

Metaは3月18日(現地時間)、コミュニティフォーラムを通じてQuestヘッドセットにおけるHorizon Worldsのサポート終了を告知した。当初の計画では、3月末にQuest Storeからアプリを削除し、6月15日以降はVRでのアクセスを全面停止。Webとモバイルのみでサービスを継続する方針だった。

ところが翌19日、Andrew Bosworth最高技術責任者(CTO)がInstagramのストーリーズQ&Aでこの方針を修正した。Bosworth CTOは「既存ゲームのVR環境を維持してほしいというファンの声を受け、Horizon WorldsをVRで引き続き運営することを決めた」と表明。Meta広報もこの内容を認めた。

ただし今回の撤回は、VR戦略の全面復活を意味するものではない。Bosworth CTOは、Horizon Unityエンジンで開発された既存のワールドについてはVR専用として維持する一方、新たなVRゲームの追加は行わないと明言した。自社開発の「Meta Horizon Engine」を基盤とする新規コンテンツは、すべてモバイル向けに提供される。同CTOは「我々のリソースの大半はモバイルとMeta Horizon Engineに集中している」とし、「消費者とクリエイターの関心の大部分はモバイルが占めている」と説明した。

Horizon Worldsは2021年、MetaがFacebookから社名を変更した際にメタバース構想の中核として打ち出されたサービスだ。ユーザーがアバターを作成し、仮想空間で交流したり独自のワールドを制作・公開したりできるソーシャルプラットフォームとして設計された。しかし実際の利用者数は期待を大きく下回った。2023年以降、月間アクティブユーザーが数十万人規模にとどまるとの報道が続き、日間アクティブユーザー1億人超のRobloxとは大きな開きがある。

財務面の損失も深刻だ。VR・AR・メタバース事業を統括するReality Labs部門は、2021年以降の累計で730億ドル(約10兆6,000億円)を超える営業損失を計上した。IDCによると、Questヘッドセットの販売台数は2024年から2025年にかけて前年比16%減少。Appleも3,500ドルの高価格帯ヘッドセットVision Proの生産を需要低迷により縮小しており、VRハードウェア市場全体が明確な停滞期に入っている。

Metaは今年1月、Reality Labsで1,500人以上を削減し、複数のゲームスタジオを閉鎖した。さらに全従業員の最大20%に影響する追加人員削減を検討しているとの報道も出ている。VRハードウェアへの投資は継続するものの、VRソーシャルサービスの優先順位が明らかに下がった格好だ。

一方、モバイル転換には一定の成果が見られる。モバイル分析企業Appfiguresによると、Horizon WorldsモバイルアプリはiOSとGoogle Playの合算で累計4,500万ダウンロードを記録。2026年に入ってからのダウンロード数は150万件で、前年同期比53%増となった。ただし累計消費額は推定110万ドル(約1億6,000万円)にとどまり、Metaの投資規模と比較すると微々たる水準だ。

今回の経緯は、VR基盤のメタバースサービスにおける事業モデルがいまだ確立されていない現実を示している。MetaはHorizon WorldsのVRサポート継続を表明したが、新規投資やコンテンツ拡充を約束したわけではない。既存コンテンツの「延命」とプラットフォームの「成長」は別の問題だ。メタバース事業の重心がVRからモバイルへ移行するなか、VRソーシャルプラットフォームが独立した収益基盤を確保できるかが今後の焦点となる。

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