世界のバーチャルコンサート市場が急速に拡大している。調査会社6Wresearchによると、同市場の規模は2024年時点で約26億ドル(約4,160億円)と推計され、2031年までに年平均14.8%の成長が見込まれている。K-POPレーベルが劇場インフラを活用しVRコンサートを定常事業へと発展させる動きも、この潮流のなかにある。
HYBE JAPANは3月11日、2026年の年間プロジェクト「HYBE JAPAN VR NEXT STAGE 2026」の始動を発表した。2024年の事業開始から3年目を迎え、アーティストラインナップと上映地域を大幅に拡充する。
今回のプロジェクトには、TOMORROW X TOGETHERとENHYPENを筆頭に、&TEAM、BOYNEXTDOOR、TWS、ILLITなどHYBE MUSIC GROUP所属アーティストが過去最多の規模で参加する。年間を通じてVRコンサートを運営し、アーティストが日本に滞在していない期間でもファンに密着型コンテンツを届けることで、ファンダムの離脱を防ぐ戦略だ。上映場所は現在、東京や大阪など主要都市の映画館で、2026年下半期には地方都市への拡大も計画されている。第1弾の上映アーティスト詳細は近日公開予定。
VRコンサートの制作は、韓国発のVRコンサート制作・配給企業AMAZE(アメイズ)が担当する。同社は米ロサンゼルスに本社を置き、アーティストをVR専用に特殊撮影して身体のプロポーションや外見の細部まで実物そのままに再現する技術を持つ。映像は4K(UHD)の約9倍にあたる12K超高精細で制作され、AIスーパーレゾリューション(AI超解像)技術を組み合わせて画質を向上させる。観客は映画館の座席でVRヘッドセットを装着し、最大7.1chサラウンド音響でコンテンツを体験する形式だ。
HYBE JAPANのVRコンサート事業は2024年に始まった。第1弾はTOMORROW X TOGETHERによる「HYPERFOCUS : TOMORROW X TOGETHER VR CONCERT」で、国内5都市の映画館で上映された。公開初日にはX(旧Twitter)で「#TXTZeroDistance」がトレンド入りし、来場者アンケートでは顧客満足度99%以上を記録した。2025年にはENHYPENのVRコンサートがラインナップに加わり、上映エリアも拡大された。
HYBE JAPAN音楽・映像事業本部の李秀賢(イ・スヒョン)代表は「2024年のVRコンサート事業の成功は、新しい技術体験ではなく、一つのエンターテインメントとして認められた証だった」と述べ、「この独自のビジネスモデルを通じて業界全体を活性化させたい」と語った。さらに、HYBE所属アーティストにとどまらず、他社アーティストIP(知的財産権)とのオープンコラボレーションの可能性にも言及した。
AMAZEは2015年にカカオの初期中核メンバーが米シリコンバレーで設立した企業で、これまでの累計調達額は約3,080万ドル(約49億円)に上る。2022年にグラミー賞3回受賞のメーガン・ザ・スタリオン(Megan Thee Stallion)とのVRコンサートツアーを米国17都市で実施したのを皮切りに、韓国SMエンターテインメントと合弁会社を設立しaespaやEXOのKAIのVRコンサートも制作した実績を持つ。K-POPとVRコンサートの融合領域で最も豊富な実績を有する企業として評価されている。
HYBE JAPANの今回のプロジェクトは、VRコンサートを単発イベントから年間常設事業へ転換する点で注目を集めている。特に他社アーティストIPとの協業まで視野に入れたことは、VRコンサートプラットフォームとしての拡張可能性を示唆する。アジア太平洋地域はバーチャルコンサート市場で年平均24%以上の成長率を記録する最も成長の速い地域であり、世界有数の音楽市場である日本でのVRコンサートインフラ拡大が、この市場の成長を後押しする事例となるか注目される。

